市民参画型社会の構築

様々な場面でよく使われている「まちづくり」は、物的な改変(道路、様々な用地、公園、他)を目的とするものだけでなく、高齢者や子どもの教育や福祉、商店街の活性化や防災、水や緑等の自然環境、自治やコミュニティ等、ソフトとハードに分けられない総合的環境全てを扱う。多くの場合、その対象は限定的な小地域である。そして、住民をはじめ、そのまちに関わるステークホルダーの誰もが平等に参加でき、民主的に議論し、基本的には多数決によらずに全員が納得するまで話し合うと言う、市民参画プロセスがコアとして存在する。
一方、都市計画や都市戦略は、県や市町村といったエリア全体、あるいは、その中の特性が近い地域全体を対象に、将来像を設定し、それを実現するための手段を検討・策定・実施するものである。この計画・戦略は都市計画・戦略の専門家がデータ分析に基づいて策定していくものであるが、実はその策定段階で市民参画が行われている。しかし、その参画の度合いは市民と行政が知恵と力を出し合い、協働して策定・実践していくレベルに到達していない状況も見られる。
あらゆるものを取り巻く環境がめまぐるしく変化し、将来の予測も困難な時代となっている。人口減少局面の進展、担い手の不足、デジタル化、SDGs・レジリエンスの達成、ウェルビーイングな社会の実現等、地域社会をめぐる課題は一層複雑さ、重要性を増している。これまでの常識や慣例は通用しない時代に、私たちはいる。
 この様な社会情勢から、市民が行政や民間と、そして市民同士がつながり、支え合い、知恵と力を結集し、この困難に立ち向かうことを目指して、「市民参画型社会の構築」が取り組まれつつある。本基礎演習では、その実態を分析し、「市民参画型社会の構築」の現在地と進むべき将来について考えていく。その際、まちづくりにおけるデジタル技術の活用に着目する。